かつては死に化粧と呼ばれていたエンゼルケアは遺体を清め、綺麗な状態にすることが目的です。病院で亡くなった方に対しては看護師が行うのが一般的ですが、単に汚れの除去だけでなく生前と同じような血色の良い感じに仕上げます。手術の傷跡や病気で生じた表皮のシミなどをメイクで上手に隠し、肌の色合いも明るく張りを感じさせることが重要です。顔に限らず全身にメイクを施すので、エンゼルケアは死に化粧と湯灌が一つになったものと言えます。エンゼルケアは医学的な見地で見れば必要はありませんが、亡くなった方の尊厳を守る意味では非常に重要な行為でしょう。遺族への配慮の意味もあるので、決して軽視はできません。
その一方でエンゼルケアの手順や仕上げの方法には明確な決まりがなく、病院ごとに独自の方法で行われています。仕上がりの良し悪しも看護師の技能に依存する傾向があり、同じ病院でも看護師によって仕上がりが大きく変わることもあるのが実態です。また、体の状態は人それぞれなので、様々な状態に対応できる柔軟性も欠かせないでしょう。綺麗にしながら自然な感じに仕上げるには高度な技能が必須ですが、すべての看護師がエンゼルケアに慣れているわけではありません。しかし、亡くなった方の体を清めて綺麗な状態で見送る姿勢は、どの病院でも共通しています。エンゼルケアは亡くなった方への最後のケアであると同時に、遺族に対する労わりの気持ちの表れと言えるでしょう。